アクチン細胞骨格は細胞表層の主成分であり、がんの浸潤、免疫細胞の遊走、神経の可塑性などで重要な役割を果たします。しかし、このような生命のダイナミズムを司るシステムは、1つの細胞をとってもその中で複雑に絡み合うため、外から眺めているだけでは個々の分子の真の働きはわかりません。この問題の解決策として、生細胞内において蛍光標識タンパク質を単分子ごとに可視化可能なことを実証し、細胞シグナルとアクチン細胞骨格変化における動的な分子連関を解明してきました。この細胞分子イメージングは今世紀に入ってはじまったアプローチで、多くの可能性が残されています。分子可視化による直接観測がもたらす優位性と潜在能力を伸ばす人材の育成に努めています。
例えば、フォルミンファミリーの1つ mDia1は、細胞内で1秒間に700個を超えるアクチンモノマーを重合しながら、線維端をプロセッシブに移動する驚くべき性質を有します。細胞の舵取り装置である葉状仮足では、アクチンが通説である「トレッドミリング機構」とは異なった様式で、速い重合・崩壊を繰り返します。また、分子可視化による低分子化合物の作用・副作用解明への応用も試みています。蛍光単分子可視化による「分子の窓」を通じて、人々がまだ気付いていない生命の動的なしくみに目を向けることが当教室の研究スタイルです。
興味のある方は、渡邊(watanabe.naoki.4v kyoto-u.ac.jp)までご一報ください。